俳句 川柳 短歌

     
   ひだまりを  選んでとどまる 朝のハエ

                                       

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    俳句 川柳 短歌  

  

                  
    
                     間良花

  
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     ひだまりを  選んでとどまる 朝のハエ

     穂が揺れて スズメ飛び 立つ走り雲

     肌寒い 障子にうつる 草の影

     ビルの壁 夢か現か せみの声

     草むしり スズメ見にくる 軒の下

     草むしり スズメ飛び交う 軒の下

     稲香る どこまで行っても 赤とんぼ

     稲香る 我を追い越す 赤とんぼ

     稲香る 何を思うか 赤とんぼ

     汗ぬぐい 思いがけなく せみの声

     もしかして ここにいるのか せみの声

     晴天に 道を横ぎる シマミミズ

     うろこ雲 確か昨日は ポッカリ雲

     雲去って コスモス畑 風強く

     晴天の コスモス畑 風が吹く

     晴天に コスモス倒れ 風が吹く

     雲飛んで コスモス倒れ 花が散る

     カラス鳴き 終の舞舞う 枯葉かな

  
     枯れ葉落ち 狐でさえも 立ち止まる

     核実験 キラキラ西日 つたの葉に

     霜上がり こおろぎ走る 枯れ葉道

     陽は上がり こおろぎ急ぐ 霜の道

     枯れ葉道 小春な日より 西の雪

     青い空 風とコスモス きのこ雲

     きのこ雲 スズメ逃げ来る 足元に

     鉢の陰 散らばる死骸 夏の虫

     出窓には 干からび散らばる 夏の虫

    
     霞去り 東は黄緑 西は白  

     山赤く そのうちにきっと 追いつくさ

   
     風吹けば 子供ら走り 枯れ葉落ち

  
     藁煙 どこまで行っても ペアトンボ

  
     藁匂い どこもかしこも ペアトンボ 

   
     草そよぎ 小春な日より 夢現

  
     水乾き 小春な日より 夢の川

  
     露消えて 小春な日より 夢消えて

  
     窓ガラス 猿の背後に 塵流れ

  
     菊薫る 小春な日より 立ちすくむ
   

     時満ちて スズメ戯れ 風満ちる

   
     雲とぎれ 台風それて セミが鳴き

   
     雲去れば 青空だけの 夏が来る

   
     何もない 青空だけの 夏が来る
 

     あの時は 鳴いてなかった セミの声

   
     夏スズメ 冬も知らずに 群れ遊ぶ

   
     こっそりと 入り始める 日差しかな

   
     控えめに下から入る日差しかな

  
     虫の声窓から入る日差しかな

   
     気がつけば 窓より入る 日差しかな

  
     知らぬ間に 畳を照らす 日差しかな

   
     湯気匂う 朝日遮り 屋根の影

   
     ガラス窓 夕日差し込む 吹雪止む

   
     吹雪止み 夕日差し込む ガラス窓

     遠き山 五月雨通し 若葉萌え

   
     五月雨に 煙る山肌 若葉萌え

   
     五月雨も 山肌透かし みどり萌え

     草揺れて 過ぎ去るものに さようなら

   
     トタン屋根 雨降りやまず 今はいつ

   
     雨の音 その静けさに 今はいつ

   
     穂が揺れて 思いたちきる 風が吹く

   
     葉はなえて 夏を忘れる 風が吹く

   
     夕の蝶 地に身悶えて 憎さ去り

   
     冷たくも ほのかな香る 今朝の雨

   
     どこへ行く 花びら散らし そよぐ風

     春が来て また春が来て 立ちすくむ

     土香り 光の粒子 降り注ぎ

   
     花散りて 青葉茂れる 永久の春

    
     道の花 かすかに揺れて 永久の現在

   
     稲光 ずぶ濡れスズメ 雨宿り

  
     木陰来て 驚き逃げる 夏スズメ

   
     風吹きて 衣服ぼろぼろ 秋スズメ

   
     敷居こえ 揺れる葉の影 入り込む

   
     夏の空 広がり過ぎて うら悲し

  
     穂波こえ 行く手さえぎる 赤とんぼ

   
     稲穂こえ 道を横ぎる ペアとんぼ

    
     壁に虻 身動きもせず 女郎蜘蛛

  
     牡丹雪 映して消える 水溜り

        

     スズメ鳴き 若草蔽う 牡丹雪

     風そよぎ 泣きべそ顔の 雪だるま

  
     土香り スズメ群れ集い 山光る

     粉雪散る 東の空は 春の青

     風匂い 雪解け水に 空の青

  
     ひさひさと 春呼ぶ雨に 眼が覚めて

  
     苦しさに 寄り来るスズメ ありがたや

     雨止んで 草むら歩む つがいガモ

  
     水嵩増し 流れに見入る つがいガモ

   
     桜見て  我を忘れぬ  この春は

   
     蔓切られ なお朝に咲く 朝顔か

  

     夏匂う 日除けカーテン 顔に触れ

    

     道中で 怒り続ける  イボムシリ

    

     路上にて 首もたげるは 蟷螂か

      

    木枯らしに 落ち葉奏でる プチバッハ

      

    木枯らしに バッハ奏でる 落ち葉かな

    吹雪く野に リンゴついばむ カラス見る

    
                       

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     願わくば 草むしりする 春死なん
           陽が暖かい 五月の末に

    
     肌寒く 窓を閉めると 静けさが
           あなたを求めて なく子が見える

    
     その老女 汗を拭き拭き 空を見る
           やはり死ぬまで 生きるべきかな

     あぜ道に 首をかしげて 思案気に
           佇むカラス 亡き父のよう

     
     風もなく 緑の谷を 颯爽と
           走り去り行く 坊主の車

     幼な子ら 花びら拾い 集めれど
           手のひら逃れ また風に舞う

     汗流れ 野山を越えて 隣町
           母も知らない 景色広がる

     見上げれば 五月雨やむも 山かすむ
           匂うがごとく 若葉茂れる

     春が来て 煙のどかに 昇れども
           人それぞれに 人形を見る

     冬去りて 春来たりとも それぞれに
           煙たなびき 人形を見る

     冬去りて 今年こそと 望めども
           また見る景色 風に吹かれて

     鳥騒ぎ 日差し眩しく 草萌える
           黄色になったり 緑になったり
 

     雲流れ 鳥はさえずり 蝶は舞い
           日差しまばゆく 緑に染まる

     詠えども 歌えども わが後悔
           止むことなし 前に歩めず

     朝までも 憂い残れど ふと気づき
           家並み超え て春山見入る

     雨上がり 過ぎる風 まだ冷たく
           仄かに香り 春のそれなり

     午睡から 母の声かと 目覚めれば
          ヒグラシの声 すべて夢なら

     夏過ぎて 取り払われた 朝顔は
          水断たれても なお朝に咲く

  

   

    

   

                つづく